たれぱんのびぼーろく

わたしの備忘録、生物学とプログラミングが多いかも

顧客価値の方程式

顧客価値 = 効用 - 費用 = (問題の重要度 * 解決策の完成度) - (ユーザビリティ未完成度 + 価格)

前提

顧客価値 ≐ 効用 - 費用

取り入れたい要素

プロダクトマネジメント・製品発見・市場投入・MVPあたりで出てくる要素たち

  • Problem: 問題の重要度, [0, +∞)
  • Solution: 解決策の完成度(問題に対するフィット度), [0, 1]
  • ユーザビリティ: 使用時の摩擦, 未完成度で記述, [0, +∞]

方程式

顧客価値 = 効用 - 費用
        = (問題の重要度 * 解決策の完成度) - 費用
        = (問題の重要度 * 解決策の完成度) - (ユーザビリティ未完成度 + 価格)

顧客価値の上界は問題の重要度で決まる.
重要でない問題の完璧な解決策を完璧な使い心地かつタダで提供しても、大した価値を生まない.

解決策が完全にフィットしていれば問題の重要性を最大限価値へ変換できる.
解決策が的外れなら価値を生まない.

解決策の機能が良くてもプロダクトとして使いづらかったらストレスでそれどころじゃなくなる(ユーザビリティ

インターネットは是非なく増幅する

メディア: 1つの意見を多数の他者へ伝達する媒介
メディアは増幅のために設計されており、インターネットもメディアの一種.
なのでインターネットに載せた意見はなんであれ増幅される.
嫌いなものが多い世界、生きたいですか?

是非なき増幅の原理

増幅機構の例: Twitterにおけるリプ、引用RT、おすすめツイート(インプレッション大ツイートのレコメンド)
これらには「これは悪だから拡散抑制されるべきでない」な感じの機能は含まれていない.
バズればなんでもバズる、そういう風に設計されている.
インターネット上に存在するほとんどのサービスはその手の制御機構を持たないので、インターネットに放った情報は事実上是非なく増幅される.

反対意見をネットに投げ込むと何が起きるか

嫌いなものが世の中に溢れる. インターネットは是非なく増幅するから.

炎上で嫌いなものが叩かれ、一時的にそれが消えてスッキリするかもしれない.
でも喧々諤々の議論がその後も続き、類似案件のボヤが大炎上に仕立て上げられ、嫌いなものがインターネット上に増える.
そして増えた嫌いなものを見て、あなたは先ほどと同じように反対意見を書き込む. 無限ループ.

では反対意見を表明せず沈黙せよと?

インターネットは是非なく増幅する.
だから、好きな世界観を増幅すればいい.
嫌いなものが流れてきたら、好きなものをその何倍も流せ.
好きなものを自分で作って放流しろ.
嫌いなものをシェアする人をリムれ.

自分が次のどちらか自覚するのが一番.

  • 「嫌いなものにイライラする!ひとこと言わないとモヤモヤする!」
  • 「好きなものだらけの世界に生きたい」

前者なら好きにすればいい、一時的にモヤモヤは晴れるだろうから.
後者なら、反対意見は間違ったアプローチ. 好きを増幅するのが正道.
ようは正義棒を振り回してスッキリしたいのか、世界を望む方向に変えたいのかの違い.

全人類を幸せにできないからビジョンがいる

ビジネスの究極目標: 全人類を幸せにする
全員が好きなものを手にし、お金を得て、精神が満たされるようにできるならそれが最高. みんなそこが理想.

現実にはそれが出来ない. 新しい会社の多くは10年以内に潰れる.

実現ほぼ不可能な目標を掲げる副作用: バラバラで中途半端な結果
やるべきこと・やれることが無限にあり、かつ人は個性・好みがあるため、それぞれが考えて動くとバラバラのことをし始める.
実現不可能なチャレンジをしているため、結局、バラバラの半端な結果が残って終わる.

ならば範囲を絞ればいい.
実現可能な目先の目標=ビジョンを設定し、取り組みの範囲を絞る.
それぞれが考えても動いても、ある程度の方向性が生まれてくる.
自然とまとまった結果が出る.
このビジョン~スコープ設定が肝心.

逆に一切設定しないとどうなるか.
可能性① バラバラ半端パターン
可能性② 現状維持にのめり込む
理想が見えないので、全員の目の前にある、今うまくいってるものを継続していく、という方向に引っ張られがち.
行き先不定は不安だからとりあえず今の仕事やってこ、というメンタリティ.
ここに嵌まり込むと現状維持の詰みがやってくる.
ビジョンで目指す先がみえると罠を回避できる (メンタリティがビジョンと合わない人はそもそも雇ってはいけない. 保守的な人はスタートアップが合わない)

現状維持が目的になったら詰み

目的=現状維持 になったらどういう思考になり、どんな結果を引き起こすか

思考

  • なぜ顧客の注文を受けるのか→注文を現状と変えないため
  • なぜ製造するのか→いままでと同じように作り続けるため
  • なぜ会議をするのか→これまで通り会議を進行するため

現状維持をすること自体が目的.
それぞれの行動に意味はなく、行動が同じである・変わらないことに意味を見出している.

結果

過程を維持したがる

第一段階として、結果でなく過程を現状維持したがりはじめる.
結果を維持しようとすると、過程をガンガン変える必要が出てくる.
そして過程を変えると結果は予想外に色々変わる (人間は不完全なので完全に予見できない).
そうすると「現状維持できてない!!!!!!」となり、目的不達成でその人はパージされる.
結果、目的を維持しがる人は死に、過程の現状維持を至高の目的とする人だけが残る.

過程を維持して緩やかに死ぬ

「過程を何も変えないこと」が理想となったら、もう何も変えられない.
過程に手を入れられないなら結果は為されるがままなので、過程が陳腐化して結果が腐っていく.
でも「過程の現状維持こそ理想」な人しかいないので、陳腐化してようが変えないのが正義.
結果は腐り続け、緩やかに死ぬ. おしまい.

どうしてこうなった

「現状維持が目的」なのは死ぬまで達成できている. つまり目的に対して合理的な行動が取れている.
ということは、そもそも目的がおかしい.

「結果を現状維持し続ける」が目的だったらこうはならない. 死ぬ気で過程に手を入れ、結果をなんとか維持して生き残るので.

現状維持するというメンタリティを目的に置いたのが間違い.
「生きる」が最終目的なのに、最終目的に必要な道具じゃなくて自分の主義主張を目的と置いたのが間違い.

価値観 - 愛する世界のカタチ

価値観は「昔のここが良かった」「今もあるこれが大切」「未来でもっとこれを大切にしたい」という判断の基準・愛する対象のこと. 思想みたいなもの.

ビジョンとの違い

ビジョンは未来の青地図、目指すべき将来像.
t+Nのスナップショットであり、今は実現していないのが前提.

FUN TO DRIVE @ トヨタ自動車

自動車は単なる輸送機ではなく、ドライブという楽しさをもった存在なんだ、という価値観.
トヨタの2011-2017宣伝キャッチコピー & 2020年前後の価値観 (豊田社長含む様々な人・場面で登場).
輸送機としての馬・愛馬としての馬、と並べられる.

活用

  • 価値観に基づいて判断をする
    • => 大切なものを大切にできる
    • => スコープを切れる / プライオリティをつけられる
  • 価値観に基づいて目標を決める
    • => 大切なものが増える世界を目指すビジョン
  • 会社として掲げる
    • => 何を大切にする会社かみんなへ伝えるメッセージ

良い市場 & 求められる製品 = プロダクト/マーケット・フィット

プロダクト/マーケット・フィット(英: product/market fit; PMF)は「良いマーケットに位置取り、彼らを満足させられるプロダクトを手にしている状態」である.
PMFの達成は事業成功に必須、なければそれが原因で死ぬ.
before PMFの段階ではPMFだけに集中せよ、after PMFからが本当のバトルの始まりだ.

原典

Marc Andreessen. (2007). The Pmarca Guide to Startups, part 4: The only thing that matters.

これ読めば十分.

PMFとは

「良いマーケットに位置取り、彼らを満足させられるプロダクトを手にしている状態1
ポイント:

  • 良いマーケット: 会社に必要な数・熱量・質の潜在顧客がいる
  • 満足させられる: 既に満足しているとは違う. シェア獲得はafter PMFの話
  • 満足させられるプロダクト: 「ほぇー、面白そうだね、機会があったら」じゃお話にならない. 同時に「完全無敵!」である必要もまだない
  • 位置取り…手にしている状態: 実際に顧客が向こうから流れ込んできている状態

要するに、ユーザーが「これ欲しい!早くくれ!」と熱望しており、かつ潜在ユーザー層が目標値にいっている状態のこと.
カタカナ語で難しくみえる(かもしれない)が、とても素直なことを言っている.

重要性

PMFは事業成功に必須(必要条件).
なぜなら

  • 悪いマーケット→買い手がいない. 最高のチームと製品だろうと失敗する2,3
  • マーケットを満足させられないプロダクト→🤷‍♂️

商売において至極当たり前のことである.

実際にスタートアップの死因第一は「市場が存在しないこと」= PMFの欠如4,5.

なぜ当たり前の概念に名前を?

PMF達成はビジネスの本質であるから達成が難しい.
難しい本質からヒトはしばしば逃げる、他のやれることへ現実逃避する.
だからPMFという言葉を与えて、PMFへなりふり構わず向かっていくことを強調する.

PMFを追え

市場が存在しないことがスタートアップの死因No.1 => PMF実現こそが焦点
他のなにもかもを後回しにして、PMFを追うべき6.
c.f. 良い後回し

アンチパターン: PMF以外を追う

PMFに失敗した例: ネームバリューのある連続起業家、著名VCからの資金調達、魅力的なプレス資料、幾ばくかのβユーザー. そして燃え尽きる資金7.
早期の資金調達がPMFを早める事は滅多にない、プレス資料が綺麗でもPMFは早くならない.
大言壮語は自由だが、それに見合うマーケットを狙う必要が出る = PMFの難易度が上がる.
β版ユーザーは自分たちにフィットするサイズの市場じゃない.
高いバーンレート、そして忍び寄る死.

before PMFの段階でチーム構築に精を出すのもアンチパターン.
構築に工数を取られ、人を増やすのでバーンレートが悪化し、ピボットしたら人材の要件もズレる.
素晴らしい市場8を見出せば、並みのチームが大成功することはザラにある9,10.
たとえ素晴らしいチームが出来ても、マーケットの筋が悪ければ勝ち目はない. 適切なマーケットに位置取りのが最優先11.

before PMFの段階で製品を磨きこむのもアンチパターン.
市場が求めるベースラインレベルの品質があればいい(合格点でいい、最高じゃなくていい)12,13
市場が潜在的に求めていれば、多少の粗があっても人々は飛びつく.

PMFを得たら

PMFになったら起きること: 作ったそばから売れ、サーバーを追加した分だけ成長し、口座が振り込みでパンパン. セールスとCSをASAPで雇わなきゃ. 取材申し込みが殺到. etc...14
PMFの前後では環境もすべきことも何もかもが違う15.
PMF状態になってはじめて、商品市場16での戦いに参戦できる.
求められているのが前提で、いかに認知を伸ばし、質を向上し、安くし、愛してもらい、シェアを取って、きちんと儲けを出すかの戦い(Growth == 1→∞).

おまけ

PMF計測への個人的見解

「測りすぎ」に類するモノだと思う.

前提として、PMFは判別が簡単だが達成が難しいもの、である (起こればわかる).
がっちりフィットした場合は開発もサポートも回らないくらいユーザーがつくので、測らずともわかる (測らないとわからないならそれはPMFが不十分).
そしてPMFの達成は死ぬほど難しい. 商売づくりと同義だから.

判別が簡単なら測る意味はほとんどない.
にもかかわらず判別方法を工夫しようとするのは「測りすぎ」.
もっと悪い場合、PMFしていない事実が怖くて少しでもPMFしてる傾向をひねり出そうと(無意識に)している.
本質的に難しい課題に取り組んでいるので失敗しているのが当たり前、過剰に測る暇があったらPMF実現にだけ集中すべき.


  1. “Product/market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market.” Andreessen. (2007)

  2. “in a terrible market, you can have the best product in the world and an absolutely killer team, and it doesn’t matter – you’re going to fail.” Andreessen. (2007)

  3. “Hopefully a great team also gets you a great market – but I can also name you lots of examples of great teams that executed brilliantly against terrible markets and failed. Markets that don’t exist don’t care how smart you are.” Andreessen. (2007)

  4. “Rachleff’s Law of Startup Success: The #1 company-killer is lack of market” Andreessen. (2007)

  5. “My contention, in fact, is that they fail because they never get to product/market fit.” Andreessen. (2007)

  6. “Rachleff’s Corollary of Startup Success: The only thing that matters is getting to product/market fit” Andreessen. (2007)

  7. “There is one high-profile, highly successful software entrepreneur right now who is burning through something like $80 million in venture funding in his latest startup and has practically nothing to show for it except for some great press clippings and a couple of beta customers – because there is virtually no market for what he is building.” Andreessen. (2007)

  8. “In a great market – a market with lots of real potential customers – the market pulls product out of the startup.” Andreessen. (2007)

  9. “I can name you any number of weak teams whose startups were highly successful due to explosively large markets for what they were doing.” Andreessen. (2007)

  10. “the market doesn’t care how good the team is, as long as the team can produce that viable product.” Andreessen. (2007)

  11. “a poor market will tend to equal failure. Market matters most. And neither a stellar team nor a fantastic product will redeem a bad market.” Andreessen. (2007)

  12. “develop the product to the baseline level of quality the market requires” Andreessen. (2007)

  13. “The product doesn’t need to be great; it just has to basically work.” Andreessen. (2007)

  14. “you can always feel product/market fit when it’s happening. The customers are buying the product just as fast as you can make it – or usage is growing just as fast as you can add more servers. Money from customers is piling up in your company checking account. You’re hiring sales and customer support staff as fast as you can. Reporters are calling because they’ve heard about your hot new thing and they want to talk to you about it.” Andreessen. (2007)

  15. I believe that the life of any startup can be divided into two parts: before product/market fit (call this "BPMF”) and after product/market fit (“APMF”).“ Andreessen. (2007)

  16. 世間から見えている、いわゆる「市場」

スコープ/範囲とプライオリティ/優先度

スコープだけ、プライオリティ無し. スコープ無し、プライオリティだけ.
どっちも不健全.

定義

スコープ: 事象に取り組むべきか否かの境界線
プライオリティ: 事象間の相対的な取り組み順位

スコープの内外、プライオリティの高低.

特徴

スコープ: スコープ内の事象には差がない
プライオリティ: 全事象に順位がつく

両方揃わないとどうなるか

スコープだけ: やるべきリストは手に入る. だが、どこから手をつけるかわからない
プライオリティだけ: やる順番はわかるが、やるべきでないことがわからない

プライオリティ無しはわかりやすい. 「重要なことから取り組め〜」ってだけ.

スコープ無しが厄介. どんなに取り組んでも、果てなくやることがある.
なぜなら、やらないこと=スコープ外が設定されてないから.
常時プライオリティを整理すれば理論上は問題ないが、人間は不完全なのでそれは無理.
「目の前の仕事に追われて長期計画が立てられないんだ」「目先の仕事が山盛り、長期に効く施策を打つ余裕がないんだよ」になる.